ディオバン事件:生物統計家の倫理観


また、読売新聞の記事には糖尿病患者が糖尿病患者でないグループに入っているとの指摘の根拠で、糖尿病の指標にヘモグロビンA1cを挙げています。臨床研究の計画書を読めばヘモグロビンA1cが糖尿病の指標だと書いてあるでしょう。しかし実際、医師でないこの統計解析者はヘモグロビンA1cが糖尿病の指標を理解していたでしょうか。彼は患者を臨床研究へ組み入れる基準、除外する基準等が書かれた試験計画書を注意深く査読していたでしょうか。臨床研究チームの医師たちは、この知識が統計解析者と共有されていることを確認していたでしょうか。論文の糖尿病でない患者群に疑義が指摘されたとき、その疑義が統計解析者に伝わっていたでしょうか。

毎日新聞の記事の統計解析者の発言「サポートするよう命じられ、一生懸命やっただけ」には臨床研究における受身の姿勢を感じます。従って、これら統計解析者の臨床研究への主体的関与が全てNOだった場合、責任の一端はあったかもしれないが、医師やデータマネージメントをする者のなかでデータ改ざん者がいれば一番罪深いのはその者です。

百歩譲って統計解析者がデータ改ざんがなかったケースを考えましたが、ニュースからは上記疑問への答えが拾えないので、統計解析者の責任の一端がどれほど重いのか分かりません。もしも、論文の疑義が指摘されたとき統計解析者へもその指摘が伝えられていたならば、彼自身の故意のデータ改ざんはなくとも、エラーを修正させる責任の一端はあったと言えます。

故意のないエラーに気づいたとき修正するのは勇気が要りますが、これも世間に対する倫理観・使命感を持てば対応できることです。対応しなくてはいけないという気持ちが不可欠です。更に修士・博士レベルの統計専門家になると、そのようなエラーを出すのが恥ずべきことというプライドからも、エラーに気づき次第修正するのが普通の感覚だということを付け加えておきます。

 

2. 臨床研究に関わる医師の倫理観の欠如

次に、臨床研究チーム事務局担当医師および協力病院の医師の倫理観の欠如について。京都新聞Naverまとめによると、京都府立医科大学側のこの二人の医師は、東京地検特捜部の事情聴取に対しデータ捏造を認めているということです。本当であればこれ以上のクロはないし、医師として倫理観の欠如としか言いようがないですね。

背景として、研究責任医師である元教授に気に入ってもらえるようデータを捏造したのではないかと伝えられています。また、この元教授がKyoto Heart Study以外の14報の論文でデータ捏造・改ざんをしていました。

このことからすると、府立医大の臨床研究不正体質は慢性的で、医師側のほうが責任は重いかもしれない。医師主導型臨床研究の当事者であり研究結果の社会的影響を予測できるものが、自己の手柄を優先し、統計解析者やデータマネージャーに主体的に関わらせ試験内容の科学的知識を共有し倫理的意義を十分自覚させなかったのかもしれない。統計解析者を隠れみのにしたのかもしれないとも思えます。


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