iPS細胞で薬はいらなくなる?


以上のように、iPS細胞によって将来薬が全くいらなくなるとは考えにくいことを述べました。しかし、「従来は臓器移植提供を待つしかなく薬は対症療法でしかなかった病気が、iPS技術によって治せるようになる」という限定的な意味で、ある種の薬はいらなくなるとも言えるでしょう。

近年、あたらしい医薬品の開発とともに医薬品の定義が広がってきました。例えば生物由来の医薬品が加わっています。これらは生物学的製剤、抗体医薬品といったものです。また、低分子の薬剤やモノクローナル抗体など分子標的薬も医薬品の定義に入ってきました。これら医薬品の承認には、薬事法のもとPMDA(医薬品医療機器総合機構)による審査が必要になります。

いっぽう、薬事法上、iPS製品などは医薬品として定義されてはいません。平成25年薬事法が改正され、平成26年11月25日の施行によって、医薬品・医療機器とは別の新しいカテゴリー「再生医療等製品」がつくられました。そして、iPS製品はそこに区分されることになりました。この区分にともない、iPS移植製品は、PMDAの審査においても医薬品の審査プロセスとは別の再生医療等製品の審査プロセスをたどることになります。

PMDAの資料(ページ34)のように、iPS製品の治験の期間が短くなり、患者さんのもとへ早く届くよう期待されています。

iPS製品は、医薬品と多少用いられ方が違い、また行政上の区分も医薬品とは違った扱いがされているということが分かりました。iPS製品の開発はそのプロセスが優遇されているものの、医薬品と完全に競合するものではなく、むしろ補完しあうものと思います。

本当のiPS移植製品のライバルは、エンジニアの世界からもたらされるデジタイズド・メディシンにおける製品でしょう。人間のからだを大きくて精密な機械(Machinery)に見立て、モデリングをもとに開発される製品です。例えば、完全に自律したロボ膵臓(Robo Pancreas)の完成も近くなっているといいます。

デジタイズド・メディシンによって、ある種の薬は淘汰され、いっぽうで新しい薬の開発が必要となるかもしれません。今後の記事ではデジタイズド・メディシンを考察予定です(但し、しばらく時間が空くかも。あしからず!)。


にほんブログ村 海外生活ブログ 海外留学(アメリカ・カナダ)へ ブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です