iPS細胞で薬はいらなくなる?


iPS細胞で創薬という話があります。iPS細胞は人工の幹細胞、つまり成熟細胞(皮膚の体細胞など)に分化してしまった細胞を遺伝子導入のリプログラミングによって再び分化前の状態に戻し、多分化能と自己複製能を持たせた細胞です。

iPS細胞の創薬における使い方は大きく二通りあるのではないかと思っています。ひとつめは、組織、または造血幹細胞などをiPS細胞から作り上げて、人に移植する。ふたつめは、iPSから組織片などを作製し、それを新薬開発のプロセスで実験材料として使用する。

前者が世間でよく知られている使い方だと思いますが、後者も有用で、例えば、これまで動物組織を使って行っていた試験管での薬理試験(薬の効果をみるテスト)、毒性試験(薬の安全性をみるテスト)や薬物動態試験(薬の組織移行性をみるテスト)などが、私たちヒトの細胞からできた人工組織を使用する実験に取って代わるでしょう。

薬をヒトに使用するのであれば、ヒト組織で実験を行ったほうが効果などの予測もより正確なものに近づくかもしれません。

また、対象とする病気を再現した人工組織を使うと、薬のターゲットをより模倣した研究が期待できます。その結果、例えば分子標的薬の開発においてもより副作用が少なく有効性のあるものが期待できるでしょう。

さて、日刊ゲンダイでは2015年3月15日付で「「iPS細胞」続々実用化で薬いらずに? 製薬業界が戦々恐々」という記事がありました。薬学を専攻していれば、また前述を踏まえれば、この見出しとは違う見方になると思います。

私はiPS細胞によって将来薬がいらなくなるということは無いと思っています。先にiPS細胞の創薬における使い方をふたとおり示したように、ひとつめの移植細胞・移植組織といった用い方であれば、それは従来考えられている薬(錠剤、カプセル剤、注射剤など)とは違います。後述するように行政上でも、医薬品ではないものに区分けされることになります。


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