デジタイズド・メディシン:ビッグデータと薬の開発


患者のデータベースをマイニングして治療に役立てていることは、明確なドメインの中で目的が明確であるデータを抽出できるという点で、実際的で大変有用なものに思われます。非・低侵襲の側面とならんで、デジタイズド・メディシンの中でも期待が持てるところではないでしょうか。

i2b2プラットフォームやSHRINEのようなサーチツールの採用は多くの病院ですすんでいたそうですが、残念ながら、患者のプライバシーと病院側の知財の問題で、一時滞っていました。現在はこの二つの問題を乗りこえ、活用を進めているようです。

以上まとめると、今回はエンジニアの世界からもたらされるデジタイズド・メディシンをIEEE SPECTRUMの2015年6月号の特集より考察してみました。デジタイズド・メディシンの中でも個体内における治療法開発に伴って、これまでになかった新薬の開発が求められる可能性があることを述べました。

また、デジタイズド・メディシンで利用される個体間データ、主にビッグデータについては、新たな仮説を探したり、実証実験結果をさらに確認するエビデンスを求めるのに有用だと思われました。デジタイズド・メディシンで期待したいのは、個々の患者へ最適な治療法を検索し適用することと、非・低侵襲的アプローチの可能性があるということでした。

新薬の研究開発で用いられる従来の実験方法は、因果関係をクリアに観察できるという点で今後も欠かせないでしょう。ただ、例えば再現性あるバイオスタンプの開発がすすめば、臨床試験の手法は簡便に改善していくかもしれません。特にアメリカでは、様々な集団を対象に臨床試験をすすめたいことから積極的な採用もありうるでしょう。

臨床研究においてはビッグデータというマジックワードによって相関関係と因果関係を見間違えないことが重要です。たとえば、副作用情報のシグナルはビッグデータで拾えるかもしれないが、新薬との因果関係を特定するにはゴールド・スタンダードな臨床試験を行うことも必要です。また従来型の臨床試験であっても、統計的に高度な解析手法を使えば得られるデータをフルに活用し新たな知見を得ることもできます。

デジタイズド・メディシンに関しては、従来型の手法との違いを理解しながら、どこまでオープンマインドに新しい技術と手法を取り入れることができるか問われているように思います。

“Dr. Watson will see you… some day”の記事では、米国のクイズ番組「ジェパディ!」でIBMが開発した人工知能(AI)ワトソンが人間と対戦して優勝したように、(遠い将来ですが)医療分野で人間の医師にかわるメディカルAIが開発されるように書かれています。そこまでくると、オープンマインドではいられなくなる気がしますね。


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