デジタイズド・メディシン:ビッグデータと薬の開発


例えば、”100,000 people, 250 biomarkers, and the quest for good health”の記事より、シアトルのシステム・バイオロジー研究所が行う100Kウェルネス・プロジェクトでは10万の健常人で250のバイオマーカーを25年間追跡し疾患との相関をみる予定にしています。所長のLeroy Hoodはこのビッグデータ解析により複雑な層別解析が可能で、予防医学に貢献できると考えています。

しかし、この記事でマウント・サイナイ医科大学のJoel Dudleyのコメントにあるように、全ての健常者が同じ行動様式の層で25年間過ごすとは限らず、解析は信頼性の低いものになるかもしれません。また、前述のように相関関係があっても因果関係があるとは限りません。

ビッグデータの貢献は、「探索的な知見(exploratory findings)=仮説を得る」のに有効で、でも必ずクラシカルな実験方法での実証が必要になると思います。または、仮説がクラシカルな実験方法で実証されたあとで、「他の因子も含めた検証的知見(confirmatory findings)つまり疫学的エビデンス」をビッグデータから得ることができます。

記事で引用されたVasan Ramachandran(フラミンガム・ハート・スタディを率いたPI)の言葉:”active intervention changes the thing you want to study”は、とても端的に表現しています。これが意味するのは、科学的に信頼性の高い知見を得るには「何を目的にデータを集めるのか、その目的は明確なドメインの中で明確に定義される」必要があるということでしょう。

つぎに、ビッグデータの使用有無でなく、エンジニアの知恵と技術だけで実際の臨床問題をすぐに解決できない事例もあります。

例えば、IEEE SPECTRUMの”Diabates has a new energy: Robo-Pancreas”という記事では、糖尿病患者の血糖値レベルの推移をモニターしてインスリンの分泌を完全に自動化した(a closed-loop systemの)ロボすい臓の開発が書かれています。これは、個体間でなく個体内におけるデジタイズド・メディシンの例です。


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