ディオバン事件:生物統計家の倫理観


ノバルティスファーマの降圧剤ディオバンをめぐる臨床研究でのデータねつ造・改ざん事件。アメリカにいると話題をリアルタイムでフォローするのが難しいですが、事件発覚より早2年、統計解析者として関与した元社員の逮捕者も出ましたね。その後立て続けに、武田薬品工業(記事1,2)、東京大学が関与する臨床研究での不正も明らかになったということで、日本の臨床研究に対する世間の目は厳しそう。

世間ではのど元過ぎた話ではありますが、今回は私の視点でディオバン不正事件について考察します。その中でも特に京都府立医科大学による臨床研究(KYOTO Heart Study)に的を絞ってみます。ちなみに、引用する情報源がすべて本当と仮定して話します。

まず、ディオバン事件が引き起こされた大きな要因は次の3つにあると見受けました。

  1. ノバルティス元社員 統計解析担当者の倫理観の欠如
  2. 京都府立医科大学 臨床研究チーム事務局担当医師および協力病院の医師の倫理観の欠如
  3. データマネージメント体制の不備

順に考察していきましょう。

1. 生物統計家の倫理観の重要性

ブログでの専門話はできるだけ薬学だけにしたいですが、やはり生物統計でPhDを取っているので色々思うことがあります。

まず、生物統計家とはどういうものか。平たくいうと統計を生物・医学研究に応用するひとです。少なくともアメリカでは生物統計学を専攻すると活躍の場は色々あって、臨床試験のデータを扱う人だけでなく、遺伝子やたんぱく質解析(ジェノミクス・プロテオミクス)を専門とする人、脳研究において新しい多変量解析方法を編み出す人、大学で理論や解析方法論を研究する人、もちろん製薬会社で基礎研究と臨床試験に携わる人など多岐に渡ります。純粋に統計学を専攻した人も生物統計の仕事をする人は多いですが、彼らの活躍の場はもっと広く、化学の世界に飛び込んだり、ファイナンスの世界で高給取りというひとも多いでしょう。


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