iPS細胞による治療の安全性とパワー50%以下について


iPS細胞由来移植製品の「有効性」評価については、何の評価項目を持って有効性とするか完全な確立はされていないでしょうから、主要評価項目とがんじがらめに縛るよりも、柔軟な二次的評価項目扱い、プルーフ・オブ・コンセプトのように設定されていることは妥当なのでしょう。

主要評価項目において有意差が示せないと、プロジェクト全体がストップしてしまい将来の研究につなぐことが厳しくなる恐れがあるからです。

しかし、医薬品の研究開発に携わるひとにとっても、開発する医薬品候補はこどものように大切な存在のはずです。その愛着ある医薬品候補は高い研究開発費をかけ厳しい審査をクリアしなくてはマーケットに出て行けない。

この事実と対比すると、優遇措置のある再生医療等製品の研究者が行政の審査で安全性を認められてない段階、1例における安全性の確認だけで、「治療は安全です。安全性に不信を抱くものは医療科学推進の足かせです」的考えを持つのはこわいです。

社会には不信・不安を抱くひとがいるのは普通だと思います。統計学的に示したように、治療自体の安全性は十分保証されていない、また科学的に証明しようとする段階です。1例で安全性が確認されたことをうけて、これまでのように科学的にも倫理的にも問題ないと確認されるなら研究を粛々と推進する段階でしょう。

また、例えば2例目を登録することになれば、患者説明同意文書またはインフォームド・コンセント・フォームと呼ばれる書類に、その2例目の患者さんから臨床研究の参加に同意するサインを得る必要があります。その説明書きに「1例での安全性が確認されました」とは書けますが、「治療は安全と確認されました」と書いてはいけないはずです。

治験だったらGCP省令違反(GCP: Good Clinical Practice)でしょう。

わたしも臨床研究や治験に関わって働いてきましたが、患者の治験登録数が計画の半分にもいかなかったり、1年経って2例しか登録がないというケースなど見てきました。臨床研究や治験に携わる研究者はみな研究の進展のなさを心配しながら、仕事をしているのでしょう。


にほんブログ村 海外生活ブログ 海外留学(アメリカ・カナダ)へ ブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です