しかし、まず英語でテーマの研究を発信しなかったこと、また当時日本人研究者のソサエティーが見向きもされなかったことが理由でアメリカでは昔の日本の研究が知られていないのだということでした。英語で発信しないのは大きな損失です。
国際的経済活動(あるいはアニメ)に詳しいひとであれば日本のことは認知してくれますが、一般のアメリカ人にとって日本は数ある国のうちのひとつ、しかも小さな国で、中国のほうがよっぽど存在感が大きいです。強いて言えば、リメンバー・パールハーバーが合言葉の真珠湾攻撃をしかけてきた敗戦国だと今でも思っているでしょう。そんな中でこれからも日本からの英語の発信力が弱いと、例えば英語による国際学会の開催が日本で少ないと、存在感はゼロに近くなる気がします。
そんなわけで先ほども述べたように、英語も研究内容も両方大事だと思うのです。こういう理由もあり、周りで活躍されておられる日本人がどれだけ英語が話せるのか、というのは私がいつも気になっているところです。学会で発表する日本人の学生、セミナーで講義される日本人教授、日本人医師の英語、などなど。
やはりアメリカで医師として働く日本人の英語はレベルが高く、ネイティブとコミュニケーションが問題なくできる、いわば冒頭のオーストリア人並みです。臨床以外の研究者や教授クラスになると複数形を文章の中で正確にいうのが難しいようだと感じます。例えば、many lesionとかmany antibodyとか言ってしまいます (正解はmany lesionsとmany antibodies)。AとTHEの使い分けは言わずもがな、一番難しくてできていません。
特に統計はありませんが、英語に難があるアジア人にとってアメリカのアカデミックでは助教授から准教授への昇進の壁が高そうな気がしてならないのですが、この壁を越えるにも英語でのスピーキング力、プレゼン力、あるいは根回し力も必要でしょう(もちろん、良い研究をしていることが前提です)。
ドイツ語が母国語のひとの話す英語、日本語が母国語のひとが話す英語、ドイツ語のほうが英語に近いので、比べると日本人に不利なのは当たり前ですが、オーストリア人の英語力に近づくには、彼らのように話す機会があれば躊躇せずに英語に切り替え、かつ文法を意識して話すしかないでしょう。日本の大学受験改革にしても、スピーキング・セクションが入っていて実践的なTOEFLをを採用するのは良いことと思います。