ディオバン事件:不正防止策に関する考察


私も委員のサポートでプレ審査を行い、そのレポートは通常そのまま委員のための資料として使われていました。

色々な分野の臨床計画書をプレ審査するのは自分自身の勉強にもなります。しかし、数多い提出資料をいくらこなしても自己の人事評価の対象外業務でした。つまり、本来の仕事や自身の研究を進めるには障害となっていました。

わたしの例のように、施設にIRBを設置した場合、審査対象の研究と利害関係のない研究者へ負担が掛かる可能性があるということです。

中央機関IRBを設置すべきもうひとつの理由は、IRBが施設にあると権威や審査期限というプレッシャーにより審査の質が下がる懸念です。熊本日日新聞社の記事では、厚生労働省の検討委員会が「大学のIRBも(不正を止める)歯止めにならなかった」と非難しています。

通常IRBにはオペレーションスタッフがいて、滞りなく毎月審査が行われるよう調整していると思います。先のわたしのIRBプレ審査の例で言えば、(プレ)審査結果のコメントに対して研究者は次の締め切りまでに回答する機会が与えられ、その回答によって承認の可否がきまっていました。

あるとき、私のプレ審査コメントが答えにくいものであったことがあります。内容が統計についてだったので、研究者側も担当統計専門家に頼んで回答するのが通常ですが、担当者にも回答が難しかったようです。コメントを書くときは、どういう回答をしてくるか予測しながら書くので、少し考えれば回答できる程度のコメントと思っていました。しかし、このあと研究者である医師から非難のメールが届き、オペレーションスタッフからはIRBの締め切りがあるがどう対応すればよいかと嘆きのメールが届き、予想外の展開となってしまいました。

もともと回答すべき内容は予測されていましたし対応しようとしたところ、審査委員が先に対応し収まりました。具体的には覚えていませんが(覚えていても書けませんが)、このときの私のコメントの意図は、当該臨床研究があくまでパイロット試験だということを統計的に自覚しているか確認したかったのだと思います。


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